表題は、金井美恵子さんの作品から勝手に借用。怒られそう。その余はほぼ自分で。

ジミー・ウォン(王羽)


 中国映画の「武侠」とか「投名状」の監督の陳可辛が、少年時代に過ごしたタイで、生涯で初めて見た映画は、王羽が主演の活劇だったと回想していて、わたしが初めてみた香港映画も、王羽の主演モノだったわい、と懐かしく思い出したわけで。

 その王羽が、4月初めに亡くなっていたことを最新の「キネマ旬報」(5月上・下旬合併号)が伝えている。80歳。日本では、座頭市もので勝新太郎とも共演した。

 「武侠」は、金城武なんかが出ているなかなか見ごたえのあるカンフー映画で、王羽は、敵役の党項族の首領となって最後の最後まで飽きさせなかった。

 当時はもう70歳代の半ばだったから、老境につき体つきはややむくんで動きも乏しかったのだけれど、周りが盛り立ていたのだ。あの映画は、スタントマンなしの身体を張っての本格映画で、副首領役の美人女優の恵英紅なんかも、よくやったと思う。

 香港映画界にあって、いまや欠かせない人材のひとりとなった谷垣健治さんのことを知ったのも、この映画から。谷垣さんは、「扉をたたけば、道は開ける」といった人生訓を実践した方で、その生き方は、とても味わい深いものがある。

 なにごとも、まず扉をたたかないとはじまらない、みたい。