表題は、金井美恵子さんの作品から勝手に借用。怒られそう。その余はほぼ自分で。

バンコク行の続き

 ヤワラートにある三角ホテルこと「中国大酒店」(↑)の前には、通りをはさんで、シノワズリーぶりが人気の四つ星ホテル「シャンハイ・マンション」があって、夜には、正面のオープンスペースで、「上海バンスキング」の型通り、きちんとした身なりの黒タイ姿で、ジャズの生演奏とかやっている。

 通りの歩道には、それなりの屋台が並んでいて、ジャズが流れるなか、ややミスマッチながら、ゴムサンダルのオバサンたちが、もちろんドリアンなんかも売っている。

 <KEEN>のサンダルに、モンベルの短パン、ユニクロのシャツといった定番の耐暑姿で、ドリアンを買って、「シャンハイ・マンション」の通りに面したテーブル席に腰を下ろし、「さて、喰らうか」と、ドリアンを覆っていたラップをはがしたとたん、やっぱりウエイターがとんできてーー。

 みなさんが大好きなドリアンをめぐっては、逸話に事欠かない。

 きちんとしたホテルには、「室内に持ち込まないでください」という注意書きがあって、たばこよりも神経を尖らせている。まあ、あの匂いだから、ね。バンコクへ商用で出張した折、土産としてドリアンを買って、空港検疫を避けるために、接待用の一張羅のスーツとともにスーツケースに詰めて帰国した方がいたそうだ。あるいは、アルコールとともに食せば興奮しすぎてしまう、とか。

 アボガドの果肉よりも、もう少し軽い粘りがあって、黄色味がかり、やや反吐がでそうな甘い香りがとても強い。突起で覆われた外殻は、大きく重い。マレーシア北部のペナンとか、タイ南部のソンクラあたりが特産地で、果実が落下して毎年のようにけが人が出るのだとか。

 あれから2年余が過ぎて、外国からの観光客が減ったバンコクは、少し変化したようで、ヤワラート通りには地下鉄が延伸し、フワラポーン中央駅が廃止になってしまったのだとか。ここあたりでファランたちが隠れて買い求めたマリファナも、医療用として合法化されたみたい。

 ワクチンは、もう3回も打っているし、陰性証明があれば、ドリアンを食べに再度出向くことはそれほど難しくないようなんだけれど、もし罹患したら隔離だから、ね。会社のこともあるし、まだまだ。